吉良朗

小説 浮かんだノイズ

第22話 美樹と芹香

― 浮かんだノイズ ―  3年前だった。美樹の提案で開店五周年のパーティをした。  パーティは、顔見知った客たちだけで店を貸し切りの状態にして、食事を会費制のバイキング形式にした。  美樹としては、こ ...

小説 浮かんだノイズ

第21話 月、ふたたび・・・

― 浮かんだノイズ ―  女は店内を見回すと天井のダンボールに目を留めた。 「あー、ずっとノイズが鳴ってうるさくてね」  俺が言うと、女は何か納得したように小さく頷いた。 「木村さんはその後、どうして ...

小説 浮かんだノイズ

第20話 こころみる

― 浮かんだノイズ ―  オーディオ設備業者の男はスピーカーの細部にエアダスターをかけると、脚立きゃたつから降りて首を傾げた。 「ちょっとメーカーに問い合わせてみないとなんともいえないですね。通電して ...

小説 浮かんだノイズ

第19話 フェノミナ

― 浮かんだノイズ ―  女が帰ったあと木村はしばらく放心状態になっていたが、予定どおり夜行バスで実家に帰っていった。  一時はどうなるかと思ったが、気をとりなおした後の木村は、過去の俺の麻衣に対する ...

小説 浮かんだノイズ

第18話 暗がりのステージ

― 浮かんだノイズ ―  女が木村を急せかした。 「木村さん、ちゃんと約束してください」  女に言われると、木村は慌てて麻衣がいるらしき・・・・・・・・空間に向かってまっすぐに背筋を伸ばして立った。 ...

小説 浮かんだノイズ

第17話 木村と麻衣

― 浮かんだノイズ ―  異様な光景だった。  女は木村に向かって話すのだが、話しかけられた当の木村は自分の横の誰もいない空間に向かって話していた。 「確かに麻衣の言うとおりだ。俺、麻衣が死んだことを ...

小説 浮かんだノイズ

第16話 微かな嗚咽

― 浮かんだノイズ ―  木村は視線で、女の隣の空間を指し示して確認した。 「そこにいんの?」 「あ、いえ、隣にいますよ」  女が手で、木村の右隣りを指し示した。  木村は自分の右隣りに向くと、少し頭 ...

小説 浮かんだノイズ

第15話 嘆きのキス

― 浮かんだノイズ ―  女が――いや、麻衣・・が木村を指差して笑った。 「あ、裕典ひろのり。もしかして、私とマスターの仲なか疑ってる?」  そう言うと、チラッと俺を一瞥いちべつしてから続けた。 「な ...

小説 浮かんだノイズ

第14話 憑依

― 浮かんだノイズ ―  視界の隅で木村が俺をジッと見ているのが分かった。俺が何かいいわけでもするのだろうと待っているようだった。  しかし、俺は何も答える気はなかった。  そんな状態で膠着こうちゃく ...

小説 浮かんだノイズ

第13話 あの女…あの目 ~麻衣という女~

― 浮かんだノイズ ―  あの夜のことを思い出した俺は、背中に筋を引く冷たいものを感じながら空中をみつめていた。  視界の端には先ほどから変わらず木村の視線があった。  麻衣……いや、そうではない。黒 ...

error: