第3話 外国人アパート

執筆者 : 吉良朗

― 静かな隣人 ―

 『オマージュ商材』以降、和雄のとぼしいアイデアは早くも底を尽いた。

 そして、そこからは安直で乱暴な方向へシフトチェンジし、そしてエスカレートする。

 グループのメンバーに空き巣をやらせたり、時には一軒屋へ強盗にも入らせるようになった。

 当たり前だが、強盗はすぐに大きな騒ぎになった。

 そのため、そこからしばらく自粛・・した後は、近場を避けて隣県にまで遠征するようになった。

 こうして、短期間に行動を起こしては、一度おとなしくしてからまた行動、を繰り返した。

 ただ、おとなしく・・・・・といっても、その間もメンバーたちの通うそれぞれの学校の一部の生徒を巻き込んで、ネズミ講のようなことをやらせたりしていたので、『和雄にしては~』なのだが。

 しかし、金欲しさといたずら気分で始めたこれらのことも、次第に和雄のスリルと支配欲を満たすためのものへと変化していった。

 こうした欲求はとどまることなく、和雄は高校を卒業してからもひかりと結婚してからも、メンバーたちの意思など気にも留めず、場合によっては暴力による支配で解散はおろか誰もグループから抜けることを許さなかった。

 しかし、事態は急変する。

 八か月ほど前のことだ。

 その頃、グループ内では、それまでそれぞれのメンバーがお互いに口に出さずとも感じていた、和雄との関係を経ちたい、という思いが密かにささやかれるようになっていた。

 しかし、その空気を和雄は見逃すことなく敏感に察知した。

 和雄たちはその少し前に、東南アジア系の外国人グループが横流しするために盗難した時計や貴金属、電化製品などを隠しているアパートが隣県にあるのを知っていた。

 そこで和雄は、グループ脱会の声をあげている主要なメンバー三人のうち、中心人物に対し執拗なまでの暴行をくわえたうえで、残りの二人を脅してそのアパートにある盗品を盗んでくるように指示した。

 しかし、これにはグループの他のメンバーたちが猛反対した。

 その外国人グループは、地元のヤクザと、時には協力しているかと思えば時には敵対するとかで、状況によってころころとスタンスを変えるため、警察はおろかヤクザでさえも動向が読めずに持て余しているらしい、という実像の掴めない連中だった。

 そんなところに手を出すのは面倒なうえに危険すぎた。
 実際それまでは和雄自身、絶対に手を出すな、とメンバーに念をおして忠告していたくらいだ。

 しかし、和雄は誰の意見も一切聞き入れなかった。

 そして、最悪な結果を招くことになる。

 外国人アパートに侵入した二人は、あっさりと外国人グループに捕まってしまった。

 その夜、和雄のスマホに、二人を引き取りに来い、という電話があった。

 相手は外国人ではなく日本人のようで、ガラの悪い口調のヤクザの下っ端といった感じだった。

 おそらく、盗難品の横流しはヤクザと外国人グループの間で何か協力関係の上で行われていたのだろう。

 和雄は電話を即座に切り、それ以降かかってくる電話を一斉いっさい無視した。

 が、それで済むはずもなかった。

 こうして、和雄は外国人グループだけではなく、ヤクザからも目をつけられることになってしまった。

 ちなみに捕まった二人は、和雄が電話を切った直後、自動的に和雄のグループから事実上、脱会した。

 人里離れた山中の土の下で、産業廃棄物と共に……

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