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第12話 アコギ事件 ~麻衣という女~
― 浮かんだノイズ ― 麻衣のその不服そうな顔を見て、俺は慌てて取り繕つくろった。 「いや、あの……プロになれないからとか、ならない奴、なりたくない奴、そういうのも全部、才能ないって決めつけちゃって ...
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第11話 あいつの才能 ~麻衣という女~
― 浮かんだノイズ ― 「あいつ、なんだよ、ギブソンなんて十年はえーよ」 ステージの和田を見ながら木村は忌々いまいましそうに言うと、客席から回収してきた空きグラスをカウンター裏のシンクに乱暴に置いた ...
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第10話 あの夜のステージ ~麻衣という女~
― 浮かんだノイズ ― 店の奥の暗がりにある誰もいないステージをみつめながら、俺は思い出していた。 満席の店内の奥でライトに照らされた、あの夜・・・のステージには、木村と同様、俺の店で定期的にライ ...
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第9話 わたしが死んだ
― 浮かんだノイズ ― 「それじゃあ応援してた、こっちがばからしくなるわ!」 唖然《あぜん》とする俺と木村をよそに、女は我を忘れたようにまくしたてた。 「あのさ、音楽やるのにプロとかアマチュアとかっ ...
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第8話 ハウリング
― 浮かんだノイズ ― 女は、呆気あっけにとられた表情をしている木村に気づくと、あっ、と小さく叫んで慌てて話題を変えた。 「あー、あの、木村さんは、実家に帰るんですか?」 「え? あ、あー……」 ...
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第7話 空席に呟く女
― 浮かんだノイズ ― よりによって、死んだ彼女の写真を忘れるか?―― 俺は呆あきれながら視線をずらしたのだが、ふと女が木村を見つめているのが視界に入った。 その目には少し怒りのような、蔑さげす ...
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第6話 木村のこと
― 浮かんだノイズ ― 俺と美樹が新しいバイトを探していた頃、木村は俺の店でライブをやるようになって2年が過ぎていたが、ファンがあまり増えないことに悩んでいた。 その結果、自分の本気度が足りない、 ...
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第5話 その女…月
― 浮かんだノイズ ― 「お待ち合わせですか?」 俺は訊たずねねた。 すると、女は逡巡しゅんじゅんするように少し目を泳がせた。 「あー、いいえ」 「何にしますか?」 俺が訊《き》くと、女は呆気 ...
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第4話 四周年
― 浮かんだノイズ ― 俺は、磨いていたグラスをラックに置いた。 「いいですよ。どうぞ」 俺が言うと、女は軽く頭を下げてから木村と一つ席を空けて座ったかと思うと、すぐにスマホを取り出して操作をし始 ...
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第3話 僅かな違和感
― 浮かんだノイズ ― 俺の店は、ライブバーとは謳うたっているものの、小さなステージでドラムセットなどを置くスペースはない。アコースティックギターでのデュオがせいぜいのサイズだ。 出演者はサークル ...